「進度が速い塾=良い塾」とは限らない理由

本当に指導力のある塾を見抜くために

· 塾長の指導観・雑感

那須塩原市西那須野の高校受験・大学受験塾 本松学習塾塾長のブログ

進度がやたらと速く、難問を次々と解かせる塾があります。

表面的には「レベルの高い指導をしている」と思われがちですが、実はまったく逆のケースも少なくありません。むしろ、指導力が十分でない先生ほど、進度を速め、難問を課す傾向があるのです。

なぜなら、授業のペースを速めることで、生徒がついてこられなくなり、主導権を握りやすくなるからです。

普通なら、生徒が自由に質問できたり、自分の理解度をコントロールできたりするはずです。

しかし、授業についていくこと自体に必死になれば、そんな余裕は奪われます。つまり、生徒を「追い詰める」ことで、学力や経験の乏しい先生でも生徒をコントロールできるのです。

さらに、難しい問題を扱うことには、別の意図も潜んでいます。

 

生徒や保護者に対して「うちはすごい塾だ」という印象を与えるためです。

 

難問を解かせていれば、それだけで「レベルが高い」と錯覚しやすくなります。

 

本当は、生徒の力に合った問題で着実に力を伸ばす方が遥かに難しく、指導力が問われるのですが、見かけだけを重視する塾ではそこにこだわりません。

 

加えて、こうした塾は「塾内模試」を頻繁に実施します。

 

一見すると教育熱心に見えますが、実態は違います。

 

塾内模試を繰り返せば、生徒一人ひとりの学力を丁寧に見なくても、「模試の結果」をもとに話を進めることができます。つまり、模試の成績表を盾に、先生自身の指導力不足をごまかせるのです。

 

こうした塾での三者懇談を思い浮かべてみてください。「理科の成績が悪いので頑張りましょう」「英語は良いのでこの調子で」——。

 

いやいや、それくらい誰が見てもわかるでしょう、とツッコミたくなる内容ばかり。

 

生徒をよく観察し、どこに伸びしろがあり、何をどう工夫すべきか、そういった具体的なアドバイスは出てきません。

 

本当に指導力のある先生なら、たとえ難しい問題を扱わずとも、生徒の表情や発言から「つまずき」を読み取り、適切なフォローができます。

 

また、進度をいたずらに速めることなく、一人ひとりの理解度に合わせた授業を展開できるはずです。

 

逆に言えば、進度や問題のレベルだけで塾の良し悪しを判断するのは、非常に危険なのです。

 

子どもをどんな塾に通わせるかを考えるとき、ぜひ「速さ」や「難しさ」といった表面的な指標ではなく、その子の理解にどれだけ寄り添ってくれるかを基準にしていただきたいと思います。

 

派手さに惑わされず、着実に力を伸ばす場を選びましょう。