「Fake it until you make it.」が持つ、もう一つの意味

· 塾長の指導観・雑感

那須塩原市西那須野の高校受験・大学受験塾 本松学習塾塾長のブログ

6年前、ある言葉について書いた当ブログの記事が多くの反響を呼びました。
 

それが、石井裕之さんに教えていただいた“Fake it until you make it.”
 

直訳すると「できるようになるまで、できるふりをしろ」。

ただ、これは単なる“演技”のすすめではありません。
 

そして今回は、この言葉の“もう一つの側面”について、改めて書いてみたいと思います。

「今の自分には無理だ」
「志望校には届かない」
「もっとできる人じゃないと…」

こういった言葉を生徒たちから耳にするたび、私はこのフレーズを思い出します。

なりたい自分のふりをする——ではなく、“なりたい自分として、今を生きる”。

 

実はこの言葉の核心にあるのは、“行動の模倣”ではありません。
 

もっと根本的な、「前提の書き換え」です。

 

たとえば、ある高校に合格したいとします。
 

でも今の自分には到底届かない。模試の判定も悪い。
 

そんなとき、普通は「合格ラインに達したら、本気を出そう」と考えがちです。

でも“Fake it until you make it.”は、順番が逆です。
 

「合格している人なら今、何をしているか?」
という“前提”から日々の行動を決める。
 

つまり、今この瞬間から「合格者としてふさわしい行動」をとる。

・帰宅後すぐに机に向かう
・スマホは物理的に遠ざける
・睡眠時間を確保する
・分からないことは「面倒だから」で済ませない

これらはすべて、その志望校の合格者ならやっている可能性が高いことではありませんか?

逆に言えば、「やっていない」という事実が、合格に値しないことを自ら証明してしまっている。

ここで重要なのは、「できるかどうか」ではなく、どの前提で今日を過ごすかです。
 

たとえ模試でE判定が出ていても、「私は合格者である」という立場から日常を設計することはできる。
 

この“立場の先取り”こそが、Fake it の本質です。

とはいえ、一日中完璧に「理想の自分」を演じるのは難しい。
だから「まずは短時間--1時間だけでもいい」

合格している自分になりきって、1時間だけ過ごしてみてください。
 

そうすると、ほんのわずかですが、“根拠のない自信”のようなものが内側から湧いてくる。
そしてそれは、不思議と次の行動を軽くしてくれる。

この一時間が、やがて一日に。そして一週間、一ヶ月。
 

気づけば、“ふり”だったものが“習慣”に変わり、“習慣”が“実力”になります。
 

この変化を、私は何人もの生徒で見てきました。
そして、自分自身でも何度も経験しています。

 

“Fake it until you make it.” は、「人生を変える順番の話」です。

 

できるようになったら、そう振る舞うではなく、

そう振る舞った結果、できるようになる

この逆転の発想が、目の前の現実を動かし始めるのです。