長所と短所の関係性から考える、本当の子どもの才能の伸ばし方

· 塾長の指導観・雑感

那須塩原市西那須野の高校受験・大学受験塾 本松学習塾塾長のブログ

先日、中学生の保護者の方から興味深い相談を受けました。

「うちの子は理系科目が得意なのですが、国語が苦手で。でも最近は『長所を伸ばすべきだから、理系に集中させたい』という意見をよく聞くんですが、本松先生はどう思われますか?」

確かに、「短所を克服するより、長所を伸ばしたほうがいい」という言葉をよく耳にします。一見、もっともらしく聞こえるこの助言。しかし、長年の指導経験から、私はここに大きな落とし穴があると考えています。


例えば、当塾の卒業生で現在工学部に在籍しているA君の例を紹介させていただきます。

中学時代、彼は理数系の科目で常に学年トップクラスでした。一方で、国語の成績は中の下。当時の担当講師から「工学部志望なら、理系科目に絞って勉強したほうがいいのでは」という進言もありました。


しかし、実際には、工学部受験においても「国語力の欠如」が思わぬ落とし穴となることが少なくありません。

なぜなら、最近の共通テストの傾向から、長くて複雑な日本語を読み解き、論理的に解答する力が問われるからです。


結果として、A君は高校1年生から国語の勉強にも本腰を入れることになりました。最初は苦戦しましたが、徐々に読解力が向上。その過程で、理系科目の理解度もさらに深まっていったのです。

実は、数学・物理・化学の応用問題でも、問題文を正確に読み解く力が必要不可欠だったのです。


このように、「長所を伸ばす」ということは、往々にして「関連する短所の克服」と切り離せないものです。

プログラミングが得意な生徒がいても、プレゼンテーション能力が不足していては、その才能を社会で活かすことは難しいでしょう。

芸術的センスがある生徒でも、基礎的な計算力がなければ、デザイナーとして活躍する際に支障をきたすかもしれません。
 

大切なのは、「長所」と「短所」を個別の能力として捉えるのではなく、相互に関連し合う要素として理解することです。そして、長所をより輝かせるために、どの短所を克服する必要があるのかを見極めることです。


私たちの人生は、きれいな言葉だけでは進んでいきません。時には、耳障りのいい助言に惑わされることなく、現実的な視点で子どもの成長を考える必要があるのです。
 

結局のところ、目の前にいる子どもたちの現実と向き合い、一人一人に合った最適な道筋を見つけていく。それこそが、私たち指導者の使命だと考えています。