探究学習の落とし穴

基礎なき家に未来は築けるか

· 塾長の指導観・雑感

那須塩原市西那須野の高校受験・大学受験塾 本松学習塾塾長のブログ

子供たちの学力低下が叫ばれる昨今、その原因の一つとして、基礎学力の軽視と「探究学習」への過度な傾倒があるのではないでしょうか。

 

数学の合同条件、解の公式について即答できない。基本的な漢字について意味も用法もよくわからない。

 

一方で「SDGs」や「プログラミング」といった現代的なテーマについては学校で多く触れているためか饒舌に語ることができる。

 

学校では「探究学習」の時間が多く、グループワークやプレゼンテーションにも慣れています。しかし、基本的な計算力や漢字力となると心もとない。

 

これは決して珍しい例ではありません。基礎知識があやしいにもかかわらず、学校では「考える力」や「21世紀型スキル」の育成に重点が置かれ、基礎学力の徹底訓練の時間が削られているのが現状です。

 

確かに、創造性や批判的思考力は重要です。しかし、それらは真空の中で育つものでしょうか?

 

私は、基礎学力を「思考の道具」だと考えています。

 

九九や漢字、基本的な語彙や文法は、より高度な思考を行うための必須アイテムです。これらがなければ、どんなに「探究」しても、その成果は表層的なものに留まってしまいます。

 

例えば、環境問題について探究学習を行うとします。CO2排出量の計算や、関連する科学論文の理解には、確かな数学力と読解力が必要です。これらの基礎がなければ、議論は感情的で根拠に乏しいものになりかねません。

 

また、プログラミング学習を例に取ってみましょう。「プログラミング的思考」が重視される一方で、その基盤となる論理的思考力や数学的素養が軽視されています。

 

しかし、複雑なアルゴリズムを理解し、効率的なコードを書くには、これらの基礎力が不可欠なのです。

 

つまり、基礎学力と探究学習は対立するものではなく、相互補完的な関係にあるのです。基礎あってこその探究であり、探究によって基礎が深まるのです。

 

では、私たち指導者に何ができるでしょうか?

まず、基礎学力の重要性を再認識し、その習得に十分な時間を確保することです。ドリル学習や反復練習を軽視せず、むしろそれらを通じて思考力を鍛える工夫をすべきでしょう。

 

次に、探究学習の質を高めることです。表面的な調べ学習で終わらせず、習得した基礎知識を活用して深い考察を促すようなテーマ設定や指導が求められます。

 

また保護者の方には家庭学習の重要性を認識していただきたいです。

 

学校だけでは基礎力の定着は難しいのが現状です。家庭での日々の積み重ねが、子供たちの未来を支える土台となるのです。

 

基礎なき家に未来は築けません。私たちは、子供たちに確かな基礎学力という「礎石」を与え、その上に探究という「柱」を立てる。そうすることで、彼らは自らの力で堅固な「未来の家」を建てることができるのです。